第11章 風が残したノート 2025年08月01日 旅から戻ったこむぎは、何日ぶりかもわからない静けさのなか、自室の窓辺に座っていた。時計は動いているはずなのに、時間だけが部屋に置き去りにされたようだった。壁には、旅立つ前に貼ったままの日本地図がある。東北の各地にはピンの跡が残り、赤い糸が幾重にも絡み合って、まるで蜘蛛の巣のように広がっていた。