不来方鉄器を出たあと、盛岡の夕暮れは思いのほか静かだった。繁華街のざわめきから一歩離れるだけで、街はすぐに古い呼吸を取り戻す。

その夜、こむぎは八幡平のキャンプ場にテントを張った。
夏休みにはまだ早く、敷地内に人影はほとんどない。
風の音と、遠くで鳴く虫の声だけが、広い空間に溶けていた。

八幡平アスピーテラインを走っていると、道路わきから3台の白バイが飛び出してきた。空気を切り裂くように、サイレンが鳴った。

こむぎはナビを見つめた。画面の赤い印は山の奥深く、林に飲まれそうなほど孤立していた。 人の手が届く気配もなく、足跡ひとつ残らず眠っているような場所。

こむぎが家に戻ったのは、それから三日後の夜だった。 長い旅の埃を落とし、砂を浴び、ようやく自室の床に腰を下ろした。部屋は出発前と何ひとつ変わっていない。 壁の地図。赤いピンと絡まる糸。旅の途中で増えたはずの答えは、どれも形を持たず、胸の奥に沈んでいた。

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