第1章 東北ミステリーに導かれ 2025年12月14日 朝の空気は張りつめていて、ひんやりとした冷気が床のコンクリートを伝って足元から立ちのぼってくる。ガレージの隅では、古びた工具箱が控えめに存在を主張しており、天井から吊るされた裸電球が、まるで祈りの蝋燭のように淡い光を投げかけていた。
第2章 津軽海峡を越える 2025年12月14日 こむぎは約300キロメートルの距離を走り抜いて、函館のフェリーターミナルにたどり着いた。目の前には津軽海峡が広がっている。「しばらく北海道とお別れだ」かすかな興奮にこむぎの胸は高鳴っている。アナウンスに従って乗船を開始する。潮風がこむぎのバンダナをなびかせた。
第4章 土偶は夜に目を覚ます 2025年10月30日 広大な平野のなかに、一筋のアスファルトがまっすぐ続いている。こむぎはその路肩にバイクを停め、エンジンを切った。カワサキKLX250は、今日もよく走ってくれた。ライムグリーンの車体に積もった虫の残骸と長旅の埃。それをタンクの上で指先ですっと払うと、ふぅと小さく息を吐いた。
第5章 なまはげの耳にささやく風 2025年10月29日 男鹿半島の北端――入道崎。その突端に広がる草原の奥、観光客が帰ったあとの静けさが支配する浜辺に、こむぎはテントを張った。夏の夕暮れ、空にはまだ残照が色を残していたが、木々の間から漏れる光はすでに橙に染まり始めていた。