朝の空気は張りつめていて、ひんやりとした冷気が床のコンクリートを伝って足元から立ちのぼってくる。ガレージの隅では、古びた工具箱が控えめに存在を主張しており、天井から吊るされた裸電球が、まるで祈りの蝋燭のように淡い光を投げかけていた。

こむぎは約300キロメートルの距離を走り抜いて、函館のフェリーターミナルにたどり着いた。目の前には津軽海峡が広がっている。「しばらく北海道とお別れだ」かすかな興奮にこむぎの胸は高鳴っている。アナウンスに従って乗船を開始する。潮風がこむぎのバンダナをなびかせた。

かつては戸来(へらい)村と呼ばれたこの地は、山に抱かれ、田畑に守られた小さな盆地にある。

広大な平野のなかに、一筋のアスファルトがまっすぐ続いている。こむぎはその路肩にバイクを停め、エンジンを切った。カワサキKLX250は、今日もよく走ってくれた。ライムグリーンの車体に積もった虫の残骸と長旅の埃。それをタンクの上で指先ですっと払うと、ふぅと小さく息を吐いた。

男鹿半島の北端――入道崎。その突端に広がる草原の奥、観光客が帰ったあとの静けさが支配する浜辺に、こむぎはテントを張った。夏の夕暮れ、空にはまだ残照が色を残していたが、木々の間から漏れる光はすでに橙に染まり始めていた。

大湯環状列石――野中堂と万座、ふたつの巨大なストーンサークルが残る遺跡。まるで太古の時計のように、石は正確な角度で円を描いていた。

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