こむぎが田代峠で拾い上げたその金属は、これまで地球上で確認されてきたどの金属とも、明らかに異なっていた。

今回の旅に備え、こむぎの相棒のKLX250は、モトワークスの手で大幅な改造が施されていた。外観こそ従来と変わらないが、その中身は別物と言っていい。

髭のライダーに敬礼して別れると、 再び東北の大地を踏みしめた高揚感が胸に広がった。しかし、その興奮も束の間、こむぎの思考はすぐに"あの金属"へと引き戻されていった。

北上川に沿って進むにつれ、風の匂いが変わり、空気はどこか澄みはじめた。川面は穏やかで、流れは速くない。それでも確かに、時を運ぶように南へ北へと続いている。

岩手という地名は、岩に残された鬼の手形に由来すると伝えられている。
昔、岩手山のあたりには、人々を苦しめる「羅刹」という鬼が棲んでいたという。村人たちは困り果て、三ツ石神社の神に救いを求めた。神は鬼を捕らえ、「二度と人に害をなさない」と誓わせる。その証として、鬼は大きな岩に自らの手形を押し、姿を消した。岩(いわ)に手(て)の形が残ったことから、この地は「岩手(いわて)」と呼ばれるようになった。

控えめな木の看板に刻まれた文字――「不来方鉄器」
観光客向けの南部鉄器店とは違い、工房は生活の延長にあるような静かな佇まいだった。

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